5月号
2015 May
No.24
房州枇杷の産地として名高い千葉県南房総市富浦町。初夏(5月〜6月)の代表的な果物として親しまれている房州枇杷ですが、富浦町での栽培の歴史も古く約260年前の江戸中期から品種改良や栽培技術の向上をはかり今日まできました。大粒でみずみずしく香り高く、甘みと酸味のバランスが良いのが特徴です。
枇杷は寒さに弱いため生産の北限が南房総地域になります。生育のサイクルとして一般的にリンゴなど果物の多くが春に花を咲かせ受粉し、秋に実が熟して収穫されるのに対して、枇杷は晩秋11月中旬頃から花を咲かせ始めて冬を越し、翌年の初夏5月、6月に実が熟すという生育サイクルを持つ大変珍しい果物です。
開花結実と幼果の発育が冬季に行われるため、花房および幼果が低温による障害を受けやすく、枇杷栽培は寒さとの戦いとなります。
露地栽培の多くは寒害を避けるため平地よりも気温が高い南東向きの山の傾斜地を利用します。しかも水はけの良さを大切にするため急傾斜している山の斜面を利用します。そのため平地で行う様々な農作業に比べて大変な労力が必要になります。それも急傾斜の中に生えている枇杷の樹に登り「花摘み」「袋かけ」「収穫」という作業を行うのです。樹に登りながら両手が自由になる体勢を維持するだけでも大変な体力や技術が必要になります。枇杷は果実が小さい時に1つ1つ袋をかけて大切に育てます。袋をかけることで害虫や強すぎる日差しによるシミ・ソバカスから果実を守ります。取材した枇杷栽培の名人穂積昭治さんも「露地栽培には熟練した技術をもった生産者がいないとできない」とのこと。このような生産者の方々の様々な努力と労力の結果、美味しくみずみずしい枇杷を食べることができるのです。
●人口:約4万2千人
●隣接自治体:館山市、鴨川市、安房郡鋸南町
●主な産業:漁業(日本で4カ所しかない捕鯨基地のひとつ和田漁港を有する)、農業(枇杷、みかんなどの果実、花卉栽培)
南房総市は、平成18年3月20日に安房郡富浦町、富山町,三芳村,白浜町、千倉町、丸山町、和田町の6町1村が、その区域をもって合併しました。房総半島の最南端に位置し、西側には東京湾,東側及び南側には太平洋と3方を海に囲まれ,その海岸線は,南房総国定公園に指定されています。気候は,沖合を流れる暖流の影響により冬は暖かく夏は涼しい海洋性の温暖な気候。
「ビワ」という呼称は中国語の発音である「ヒワ」を真似たという説や果実の形が楽器の琵琶に似ているからなどの説があります。現在日本で食べられている品種の原産地は、中国南西部で主な生育地は亜熱帯や温帯地域。日本での主な産地は長崎県、千葉県、鹿児島県など。11月〜2月に白い小さな花を咲かせ、冬季に幼果が生育し、初夏に卵形で黄橙色の実をつける。
房州枇杷は長崎県の茂木枇杷と並ぶ日本2大産地の1つと言われ、1粒1粒の形の美しさ、黄橙色の輝き、果汁の豊富さ、上品な甘みは、初夏の果物の女王として愛されています。房州枇杷は4月〜5月に出荷されるハウス枇杷と5月〜6月に出荷される露地枇杷があり、ハウス枇杷の代表品種は富房、瑞穂で、露地枇杷の代表品種が大房、田中です。房州枇杷は全体として他の枇杷より大果系が多く、甘みと酸味のバランスが良いのが特徴です。房州枇杷の歴史は古く、原産地中国から日本に江戸時代に伝わり、富浦地区の温暖な気候、海、山の地形と自然条件が果樹栽培に適していること、さらには先人達の知恵と栽培技術の結集が現在の恵みをもたらしました。伝統の果物、房州枇杷は千葉県ブランドの代表格として、その品格を保っています。
●結実以降は基本的に農薬は使用しません
●果実や枝、葉に毛が生えていて保護をしている
●果実の毛があることで鮮度が保たれる
●収穫直後が最も美味しい
●意外にも可食率がフルーツの中でも高い
●長期間保存できないので購入後なるべく早く食べる